コラム

借りられる金額=買っていい金額ではありません。後悔しない住宅ローンの考え方

作成者: 宮島|Aug 6, 2026, 8:51:40 AM

 

マイホームの購入を本格的に検討し始めると、多くの方がまず手始めに「自分は住宅ローンでいくら借りられるんだろう?」と調べるのではないでしょうか。インターネットのシミュレーションサイトを使ったり、不動産会社や銀行の窓口で試算してもらったりして、「〇〇万円まで借入可能です」という数字を目にすると、それがそのまま自分たちの購入予算だと考えてしまいがちです。

しかし、ここに住宅購入における最大の落とし穴が存在します。結論から申し上げますと、「銀行が貸してくれる金額(借入可能額)」と「自分たちが安全に返していける金額(返済可能額)」は全くの別物です。

銀行から提示された限界の金額でローンを組んでしまった結果、毎月の返済に追われて生活が圧迫されたり、教育費や老後資金の貯蓄ができなくなったりして後悔するケースは後を絶ちません。

今回は、なぜ「借りられる金額」で買ってはいけないのか、そして後悔しないための「本当に買っていい金額」の導き出し方について、資金計画の基本から詳しく解説します。

1. 「借入可能額」と「返済可能額」の決定的な違いとは?

住宅ローンの資金計画を立てるうえで、最優先で理解しておかなければならないのが、以下の2つの概念の違いです。

  • 借入可能額(借りられる金額)年収や勤務先、勤続年数などのデータをもとに、金融機関が「審査上、貸し出してもよい」と判断した融資の上限額です。
  • 返済可能額(買っていい金額)自分たちの手取り収入や日々の生活費、将来のライフイベント(教育費、車買い替え、老後資金など)を考慮したうえで、将来にわたって家計に無理なく返し続けられる安全な金額です。

なぜ銀行の「借入可能額」は高めに設定されるのか?

金融機関の審査基準は、主に「年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)」で計算されます。年収が500万円の方であれば、年間175万円(月々約14.5万円)程度の返済までなら融資可能と判断されるケースもあります。

しかし、銀行の審査基準には、「あなたが毎月どれくらい生活費を使っているか」「趣味や外食にいくらかけているか」「将来子どもを何人育てる予定か」といった個別の事情は一切考慮されません。あくまで「年収に対して理論上、回収不能にならない限界値」を提示しているに過ぎないのです。

銀行が「貸せる」と言った金額を鵜呑みにして家を買うことは、自分たちの暮らしの質や将来の安心を危険にさらすことと同義であると知っておきましょう。

2. 自分にとっての「買っていい金額」を導き出す3つのステップ

では、具体的にどのようにして安全な予算(買っていい金額)を算出すればよいのでしょうか。以下の3つの手順に沿って、足元から逆算して考えていくのが鉄則です。

ステップ①:手取り月収から「返済負担率20%〜25%」を目安にする

予算を考える際のスタート地点は、総支給額(額面年収)ではなく、税金や社会保険料が引かれた後の「手取り額」です。

住居費に割く負担率の安全基準は、手取り月収の20%〜25%以内と言われています。手取りの30%を超えてくると、日々のやりくりに圧迫感が生じ、貯蓄のペースが著しく落ちてしまう傾向にあります。

  • 例:夫婦合わせた手取り月収が40万円の場合
    • 適切な住居費の上限:40万円 × 25% = 月々10万円まで

ステップ②:住宅ローンの返済以外の「維持費」を差し引く

住宅にかかるお金は、ローンの返済だけではありません。購入後は以下のような維持費が毎月、あるいは定期的に発生します。

  • マンションの場合:管理費、修繕積立金、駐車場代・駐輪場代(毎月1.5万〜3万円程度)
  • 戸建ての場合:将来の外壁・屋根塗装や水回り設備改修のためのセルフ修繕積立(毎月1万〜1.5万円程度を自主貯蓄)、固定資産税・都市計画税の積立

仮にステップ①で「住居費の上限は月々10万円」と算出した場合、そこから維持費(仮に月2.5万円と想定)を引いた「月々7.5万円」こそが、住宅ローンの返済に充てられる本当の上限額となります。

ステップ③:毎月の返済額から「総借入額」を逆算する

毎月の住宅ローン返済上限額が決まったら、金利や返済期間を設定して総借入額を逆算します。

  • 例:月々の返済7.5万円/返済期間35年/金利0.5%(変動金利想定)の場合
    • 総借入額の目安:約2,850万円

このように、「年収500万円だから〇〇万円借りられる」という大雑把な計算ではなく、「自分たちの手取りから無理なく払える月々の上限額」から逆算してはじめて、現実的で安全な物件予算(借入額)が見えてきます。

3. 後悔しない住宅ローンを組むための4つの鉄則

適切な借入額を算出できたとしても、長い返済期間中にはさまざまなリスクや変化が訪れます。後悔しないために必ず押さえておきたい4つの鉄則をご紹介します。

① 金利上昇リスクと「ボーナス併用払い」に頼りすぎない

低金利が続く近年では変動金利を選ぶ方が多くなっていますが、変動金利には将来的に金利が上昇し、返済額が増えるリスクが潜在しています。返済額を限界ギリギリに設定していると、わずかな金利上昇でも家計が破綻しかねません。また、「ボーナス払い」を前提とした資金計画も避けるのが賢明です。会社の業績や転職によってボーナスが減少・支給なしとなった際、ローンの支払いが一気に苦しくなるためです。

② 手元の現金をすべて使い切らない(「生活防衛資金」の確保)

住宅購入時には、税金や各種手数料などの「諸費用(物件価格の約5%〜10%)」がかかります。だからといって、手持ちの貯金を頭金や諸費用にすべて充ててしまうのは大変危険です。 病気やケガによる一時的な休職、急な転職、家電製品の故障など、人生の不測の事態に備えて、最低でも生活費の3ヶ月〜6ヶ月分以上の現金(生活防衛資金)は手元に残しておきましょう。

③ 子どもの教育費と老後資金の「ピーク」を予測しておく

住宅ローンは20年、30年と長期にわたって返済が続きます。購入当初は余裕があっても、10年後・15年後に「子どもが高校・大学に進学する時期」を迎えると、教育費のピークとローン返済が重なり、家計が一気に厳しくなるケースが非常に多いです。 また、定年退職を迎える年齢までにローンを完済できるのか、それとも退職金で繰り上げ返済する計画なのか、老後の年金生活に入っても返済が残らないかといった、長期的なライフプランの見通しを立てておくことが不可欠です。

④ ライフスタイルの変化に備え「流動性の高い物件(資産価値)」を選ぶ

人間関係やキャリア、家族構成の変化など、人生にはどれだけ綿密に計画を立てていても予期せぬ出来事が発生します。万が一、家を手放さざるを得なくなった場合でも、「駅徒歩圏内」「周辺利便性が高い」といった資産価値の下がりにくい物件を選んでおけば、「売却して住宅ローンを一括完済する」、あるいは「第三者に賃貸して家賃収入でローンを返済する」といった柔軟なリスクヘッジが可能になります。

まとめ:家を買うことは「目的」ではなく「豊かな暮らしの手段」

住宅を購入すること自体は人生の大きな節目であり素晴らしい決断ですが、それによって日々の生活が困窮してしまっては本末転倒です。大好きな趣味を諦めたり、家族での旅行や外食を極端に節約したりしてローンを返し続ける生活は、決して望ましいものではないはずです。

「借りられる金額」という銀行側の都合で決められた数字に惑わされることなく、「自分たちがどんな暮らしを送りたいか」「いくらなら笑顔で返し続けられるか」という自分たちの基準で「買っていい金額」を見極めましょう。

ゆとりのある資金計画こそが、購入後の新生活を長期にわたって豊かで安心なものにしてくれる一番の鍵となります。