静かに進む「手取り減少」と、会社員が今から考えるべきこと
2027年以降に予定されている厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げは、一見すると地味で分かりにくい制度改正です。
しかし実態は、特定の会社員に対して、確実かつ長期的に影響する改正であり、「知らないまま迎えるか」「理解した上で備えるか」で
将来の可処分所得に大きな差が生まれます。
本コラムでは、制度の基本から改正の背景、影響を受けやすい層、そして現役世代が取るべき現実的な対応までを丁寧に整理していきます。
厚生年金の保険料は、実際の給与額そのものではなく、標準報酬月額を基準に計算されます。
これは毎月の給与を一定の幅で区分し、その区分(等級)ごとに保険料を決める仕組みです。この制度には、これまで「上限」が設けられていました。つまり、どれだけ給与が高くても、一定額以上は厚生年金保険料の計算対象にならず、社会保険料は“頭打ち”になる構造でした。多くの高所得会社員にとって、これは無意識のうちに「これ以上は増えない負担」として前提になっていた部分でもあります。
今回の改正では、この標準報酬月額の上限そのものが引き上げられる予定となっています。
意味するところは非常にシンプルです。
これまで上限に達していた人も
より多くの給与部分が
厚生年金保険料の計算対象になる
結果として、会社員である限り、社会保険料の負担が増える人が出てくるということになります。
これは「増税」ではありません。しかし、毎月の手取り額という視点では実質的な負担増であることに違いはありません。
今回の上限引き上げの影響を最も強く受けるのは、次のような層です。
年収が高めの会社員
管理職・専門職
昇給や役職昇格が見込まれる30〜50代
共働きで世帯年収が高い家庭
これまで「社会保険料はもう上限だから」と考えていた人ほど、改正後の負担増をはっきり体感する可能性があります。
一方で、年収が上限に届いていない層にとっては、短期的な影響は限定的です。
よくある反応として、「払う分、将来もらえる年金も増えるなら問題ないのでは?」という声があります。確かに制度上、保険料を多く払えば将来の年金額に反映される仕組みになっています。
しかし、ここには冷静に見るべき点があります。
何歳から年金を受け取るのか
何歳まで生きるのか
インフレによって年金の実質価値はどうなるのか
これらはすべて不確定です。
一方で、保険料の負担増は、今この瞬間から確実に発生します。特に高所得会社員にとっては、「今の手取り減少」と「将来の不確実な増額」を天秤にかけて考える必要があります。
今回の上限引き上げは、単なる制度調整ではありません。
背景には、
少子高齢化の進行
年金財政の長期的な維持
高所得層への負担シフト
といった構造的な問題があります。
言い換えれば、国は次のような方向性を示しています。安定して高い収入を得ている会社員には、これまで以上に制度を支えてほしい
この流れは、今回限りで終わる可能性は低く、今後も形を変えて続いていくと考えるのが自然です。
制度は自動的に変わりますが、家計を守る行動は自動ではありません。
残業や副業で補っても、税金や社会保険料が増え、思ったほど残らないケースが多くあります。
影響がじわじわ出る制度ほど、気づいたときには差が開いています。
重要なのは、制度に逆らうことではなく、制度変更を前提として人生設計を組み直すことです。
手取りが減る前提で家計を見直す
公的年金だけに過度な期待をしない
私的な資産形成を並行して進める
特に会社員は、
収入が安定している
長期で計画を立てやすい
という強みがあります。
だからこそ、早く考え始めた人ほど有利になります。
厚生年金の上限引き上げが突きつけているのは、「給与収入だけに依存することのリスク」です。給与は増えても、税金や社会保険料の影響で手取りは思うように増えません。
この構造が続く以上、
収入の入り口を分ける
働かなくても入るお金を考える
という発想が、将来の安心感につながっていきます。
厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げは、派手なニュースにはなりにくい改正です。
しかし、
対象になる人には確実に影響し
影響は毎月・長期にわたって続く
という特徴があります。
だからこそ、「自分には関係ない」と思わず、一度立ち止まって自分の収入・家計・将来設計を見直すことが重要です。
制度は選べません。しかし、どう備えるかは選べます。2027年を迎える前に、知っている側・考えている側に回ることが、
これからの時代の賢い選択と言えるでしょう。
対象者: 月給(総支給額)が66.5万円以上の方。
保険料の増加: 上限が75万円まで上がると、月給75万円以上の方の場合、本人負担分の保険料は月額で約9,150円(年間で約11万円)増加する見込みです(※現在の保険料率18.3%で計算)。
年金受給額の増加: 支払う保険料が増える分、将来受け取る老齢厚生年金の額も増えます。試算では、上限(75万円)で10年間保険料を納めた場合、年金額が年約6万円(月5,000円程度)増えるとされています。
企業の負担: 社会保険料は労使折半のため、会社側の負担も同様に増えることになります。
この改正は、賃金水準の上昇に合わせて上限を見直すことで、制度の公平性を保ち、年金財政を安定させることを目的としています。2027年9月給与分から段階的に手取り額に影響が出始めることになります。