年金制度の主な改正予定(2026年4月以降) ――「もらい方」より「備え方」が問われる時代へ

日本の年金制度は、静かに、しかし確実に転換点を迎えています。
「将来もらえる年金はいくらか」という問いから、「働き方・稼ぎ方・備え方をどう設計するか」へ。

本コラムでは、今後数年で予定されている年金制度の主要改正を整理し、それが現役世代・高所得層・これから資産形成を考える人
どのような影響を及ぼすのかを解説します。

年金改正3

 


在職老齢年金の基準額引き上げ(2026年4月〜)

「働くほど損する」構造はどこまで解消されるのか

在職老齢年金とは、年金を受給しながら働く人の収入に応じて、年金が減額される制度です。

これまで多くの人が、「働きすぎると年金が減る」「定年後は収入を抑えた方が得」というジレンマを抱えてきました。

2026年4月以降は、この在職老齢年金の基準額(減額が始まるライン)が引き上げられる予定です。

何が変わるのか

  • これまでより多く働いても年金が減りにくくなる

  • 高齢期の就労意欲を阻害しにくくなる

  • 専門職・管理職・再雇用層にとって追い風

ただし注意点

制度が「改善」される一方で、「年金+給与」で生活が完結する前提がより強まるとも言えます。つまり、国は「長く働いてもらう」方向に舵を切っているというメッセージでもあります。


厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げ(2027年〜)

高所得者ほど「負担増」を実感する改正

次に影響が大きいのが、厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げです。標準報酬月額とは、厚生年金保険料を計算するための基準となる報酬額。現在も上限は存在しますが、2027年以降、この上限が引き上げられる予定です。

何が起こるか

  • 高所得者ほど社会保険料の負担が増える

  • 手取り収入は目に見えて減る

  • 会社員である限り、回避はできない

よくある誤解

「払う分、将来の年金も増えるのでは?」という声もありますが、実際には

  • 増加分と負担増は必ずしも比例しない

  • 受給開始年齢・寿命次第で回収不能の可能性

つまり、確実に今の手取りは減るが、将来のリターンは不確実という性質を持っています。


遺族年金の男女差解消(2028年4月〜)

「家族のかたち」に制度が追いつき始めた一方で

2028年4月からは、遺族年金における男女差の解消が予定されています。

これまでの制度は、

  • 専業主婦モデル

  • 男性が稼ぎ、女性が支える

という前提で設計されてきました。しかし現代では、

  • 共働き世帯が主流

  • 女性の就労率上昇

  • 家族構成の多様化

が進んでいます。

改正の方向性

  • 男女で異なっていた支給要件の是正

  • 性別によらない制度設計へ

ここでの注意点

平等化は進む一方で、「手厚い保障」が薄まるケースも出てきます。つまり、制度は「守ってくれるもの」から「最低限を支えるもの」へという変化が進んでいるのです。

年金改正4


iDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充

「自分で備える」ことが前提になる時代

公的年金の調整が進む一方で、私的年金制度であるiDeCoの拡充が続いています。これは偶然ではありません。

iDeCo拡充が意味すること

  • 老後資金は「自己責任」の比重が増す

  • 国は税制優遇で“自助努力”を促す

  • 公的年金だけでは足りない前提

拡充の方向性としては、

  • 加入年齢の引き上げ

  • 拠出限度額の見直し

  • 会社員の使いやすさ改善

などが想定されています。

ただし万能ではない

iDeCoは優れた制度ですが、

  • 原則60歳まで引き出せない

  • インフレ耐性は商品次第

  • 取り崩し時の税制も考慮が必要

つまり、iDeCoは「軸」にはなるが「答え」ではないという位置づけです。


これらの改正から見える共通メッセージ

4つの改正を並べてみると、国の一貫したメッセージが浮かび上がります。

共通点

  • 長く働いてもらう

  • 高所得層にはより多く負担してもらう

  • 家族モデルは多様化前提

  • 老後は自分でも備えてほしい

言い換えると、制度に「依存」する時代から、制度を「理解して使う」時代へ移行しているのです。


では、現役世代はどう考えるべきか

重要なのは、「制度改正を嘆くこと」ではありません。

  • 手取りが減る前提でどう動くか

  • 公的年金に何を期待し、何を期待しないか

  • 私的年金・資産形成をどう組み合わせるか

これを早い段階で設計することです。

特に、

  • 高所得会社員

  • 医師・士業・専門職

  • 共働き世帯

ほど、影響は大きくなります。


まとめ|年金制度は「知っている人」から順に変化に対応できる

今回の年金制度改正は、どれも単体で見れば「調整」に見えるかもしれません。

しかし積み重ねると、老後の前提条件そのものが変わっていることがわかります。

  • 働き方

  • 稼ぎ方

  • 守り方

これらを制度ベースで理解し、自分の人生設計に落とし込めるかが、今後の安心度を大きく左右します。年金制度は「知らなくても自動で守ってくれるもの」ではありません。理解し、備え、使いこなすものへと変わっています。

 

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